ROCフィギュアスケーターの暫定資格停止処分解除を支持したCAS裁定理由に関するWADAの声明

WADA statement on CAS award confirming the lifting of the provisional suspension of a ROC figure skater

内容概略

公表されたCASパネルによる裁定理由は、CASパネルが義務的な暫定資格停止処分の基準に関して明確で曖昧なく2021年版世界規程に定められた条項を無視すると判断したことを裏づけた。

実際、この裁定を下したことによりCASは「要保護者」の義務的な暫定処分は任意的な仮処分と考えるべきであると事実上世界規程を書き換えた。世界規程はそう定めていない。世界規程の案を作った作成者の意図するところでもなく、世界規程の3段階の協議過程でWADAのいかなる関係者からも提案されたことはない。ドーピング陽性が出た後に状況に関してなんの釈明もなく「要保護者」の競技を許すことは、スポーツ競技のインテグリティと公平に競技に向き合うアスリートの信用を傷つける危険性をはらんでいる。

また、CASパネルはCAS臨時出張所ではなくCAS提訴部門で聴聞をしていたら暫定的な救済処置を求めることができると主張している。しかしWADAは、

1. 世界規程において義務的暫定処分の解除基準には暫定的救済処置の基準を含んでいないこと

2. 暫定処分がすでに解除されていたため暫定的救済処置を求める必要性がなかったことに基づきこの論拠を容認しない。さらに、もしRUSADA規律委員会が義務的暫定処置を解除しない決定をしていたら、その決定は世界規程のもと控訴しえないはずである。

2年間におよぶ3段階の協議過程(アスリート含む)を経て全会一致で承認されたうえで決定した世界規程の明確な条件からCASパネルが乖離したことに深刻な懸念と驚きを隠せないが、将来CASパネルによりこの点が是正されることを期待する。

検体採取からストックホルム分析機関からの陽性報告に遅延があったことは、2月14日にも言及したとおり、WADAは分析機関に対して主要大会前に遅延なく分析してもらえるよう通知を図ることはアンチドーピング機関、すなわち今回はRUSADAの責任であると再度言明したい。

残念ながらRUSADAは分析機関から同機関のスタッフ内の新型コロナ拡大により遅延が生じていると通告を受けたのにも関わらず、当該検体の最優先性を伝えてはいない。